ジーニアスがレティシアに柔らかい顔を向けるのを見るだけで胸がズキンと痛み、のどが締め付けられて苦しい。


今すぐジーニアスのところに行きたい。


その視線を独り占めしたい。


ティアの中に生まれたこの気持ちはー嫉妬と独占欲。



ー気づきたくなかった。


ーこんな気持ちが生まれた理由なんて。



ティアは下唇を噛み締めて歩をゆるめた。


レティシア様とジーニアスは婚約者。そのため、心の中に住みはじめた気持ちは気づかないようにしなければならなかった。


だから考えないように、自分自身の気持ちに蓋をした。



ーキズつくのが怖かったから。



でも溢れる気持ちはもう自分では止められそうにない。


体が勝手にジーニアスを目で追い、その言動に心が一喜一憂する。



ーもう逃げられない。



ー認めなければならない。