驚きもしないのは解除法をジーニアスからすでに聞いているからなのだろう。


ティアが元に戻っているのだからそれは当然なのだが、一応渡しておきたかった。


それと、もうひとつ。


「貴女に謝らなくてはならないことがあるの」



「謝る…?」



謝られる覚えがないのか、ティアは困惑の色を浮かべた。



「舞踏会で会いたい人がいるって、ジーニアスに聞いたのよ」



「…え」



どうして知ってるの?ということが表情から読み取れて、レティシアは苦笑した。



「ふふ、その様子だとジーニアスには言っていなかったみたいね」



ーこの子を見てきたジーニアスだからこそ気づいたのかも知れないけど。


ジーニアスの気持ちを考えると少し心が痛んだ。


ジーニアスを王都に戻すため、この子を利用したのは自分だ。


ティアを王都に連れてくれば、ジーニアスが来てくれると思った。だから、どうあってもティアを王都の舞踏会に参加させるつもりでいた。


以外にもあっさりとそれをティアが了承したのは想い人がいたからだったのだ。



「想い人なのでしょう?」


確認をするように聞くと、ティアは少し悩むように視線を動かしたあと、小さくうなづいた。


それを見たレティシアは柔らかい瞳をティアに向ける。