薬品と恋心


そして、そのページは今も手元にある。


ガタゴトと石畳を進んでいく馬車の中でレティシアはその古い紙切れを眺めながら、あの日のことを思い出していた。


ジーニアスはきちんと舞踏会までに薬を完成させ、王都にやってきた。


そして、ジーニアスによって成長したあの子は今、目の前にいる。


あの会話をしたのはつい最近のことなのに、ずいぶん前のことのように思えてならなかった。



「レティシア様?どうかされましたか?」



ティアに声をかけられてレティシアはハッとした。



「なんだかぼんやりされてたみたいですけど…」



流れるような銀糸の髪に、伏し目がちの瞳。長いまつげがそこに影を落とし、色気を醸し出す。


ティアの幼かった体は大人の体に変化し、ずん胴だった腰はくびれてしなやかなラインを描いている。


白く細い指を口元に軽く当てながら心配そうにのぞきこむ仕草さえ美しく、レティシアはしばし目が離せなかった。



「いえ…なんでもないわ」



同性のレティシアでさえ、そう思うのだからジーニアスはどれほど戸惑っただろう。