「…ティアは舞踏会で会いたい人がいるらしい」



ジーニアスがぽつりとこぼした言葉にレティシアは目を丸くした。



ーあの子に会いたい人が?想い人がいるっていうの?



ー信じられない。だって、あの子はー…



レティシアの考えを遮るようにジーニアスの声が聞こえてくる。



「だからもうそれを隠す理由はないよ。それを持っていた理由は…そうだな、その内容を伝えるのが恥ずかしかった…ってことにしといて」



ジーニアスはハハッと軽く笑ったが、その姿はひどく痛々しく見えた。



「…そういうことにしといてあげるわ」



レティシアは仕方なさそうにほほ笑むことによってそれに気づかないふりをした。