ジーニアスの部屋で研究文書の最後のページを見つけたあの日。


書庫になおすと言っていた文書がなぜ部屋に置いてあるのかをレティシアはジーニアスに問い正した。


あの子が探していた薬の解除方法が載っている要のページだけが部屋に置かれていた理由を。


解除方法さえわかれば、あの子はいずれ自分の気持ちに気づいて元に戻ろうと行動するだろう。


そのはずなのに。


文書の最後のページを突きつけられたジーニアスは、特に驚くことなくただ寂しげに笑った。



「ああ、それ。見つけたんだ」



静かに落ち着いた声。そこに諦めの感情が含まれていることにレティシアは気がついた。


いつもとあきらかに様子が違う。


何かあったのかと尋ねると、先客が来たことを話してくれた。


先客は、あの子だった。


どうやら舞踏会の招待状を受け取ったその足でここに来たらしい。