ーいやだ。聞きたくない。



しかし、時が止まるはずはなく。



「婚約者よ。彼のー」



聞きたくなかった言葉はティアの耳に届いてしまった。



(そんな…)



頭が殴られたように衝撃を受け、残酷な言葉は胸をえぐっていくかのように心に痛みを広げていく。



(どうして…私は傷ついているの…)



意味もなく涙が込み上ってくるのをティアは歯を食いしばって押さえこんだ。


レティシアがまだ何か言っていたが、それはもはやティアの耳に届くことはなかった。