「あの子から依頼はあった?」



まるで最初からわかっていたかのような口ぶりにジーニアスの中でわずかな怒りがくすぶった。


ティアがあんな行動をとったのはおそらくレティシアが焚き付けたためだろう。


しかし、それは責められない。


彼女も彼女なりの考えがあっての行動だということがジーニアスにもわかっているからだ。


ジーニアスは息をはくと、冷静に返した。



「…あった」



その声には静かな怒りが含まれている。



「もちろん造るのでしょう?」



「依頼はこなす」



「そう。ならよかったわ。」


レティシアはジーニアスの声色に動じることなくにこりと微笑んだあと、一枚の封筒を差し出してきた。


そこにはティアの名前が記されている。



「なに、これ」



「王都で行われる舞踏会の招待状よ。あの子に私からのささやかなプレゼントよ」