ティアが誰とキスしようが自分が怒る理由なんてどこにもない。


それなのに、どうしてこんなにも胸がざわつくのか。



ー他の男にとられるぐらいなら。



ーいっそ自分が奪ってやりたい。



でも、彼女が今まで苦労して生きている原因は自分にある。


そんなことできるはずもない。



(それに、もしティアの気持ちが自分になかったら彼女をキズつけるだけだ)



感情のままに動くことはできない。


ジーニアスはこぶしをぐっと握りしめる。



ーお願いだから。オレを好きだといってほしい。そうしたら、きっと…。


ジーニアスはティアが帰っていった道を見やる。


打ち付けたこぶしからは血がにじんでいた。