その応酬を見ながら、ティアはぼんやりと考える。



ーどうしてここまでしてくれるの?



ーどうしてここまで来てくれたの?



ー私は約束を破ったのに。



ジーニアスを見ていると胸が痛いくらい苦しくなる。


視線の先にいるジーニアスは相手の攻撃を紙一重でかわし、相手のふところに入り込もうとする。


相手もなかなかのもので、ジーニアスにこまかなキズが次第に増えていった。


それでもジーニアスは一歩も引くことはしない。


ーどうしてそこまでして守ってくれるの?



ーわからない。



(わからないよ…)



喉の奥までが熱く苦しい。


これはいったい何なのだろう。


どうしてこんなにも苦しいのだろう。


ティアはぎゅっと手を握りしめ、今にもこぼれ落ちそうな涙を押しとどめた。


視線の先でジーニアスがキズつくたびにティアの心がまるで引き裂かれるように痛んだ。



ーやめて。



ーやめて。



ージーニアスを傷つけないで。



叫びたいのに、震える唇と乾いた喉は言葉を発することを許してはくれない。


ただ見守ることだけが今のティアにできることだった。