下町の酒場は男たちでにぎわっていた。


豪快な笑い声、注文を叫ぶ声、口げんかをしている声などが飛び交い、うるさいぐらいだ。


しかし、人が集まるところは情報も集まるものだ。


表に出ることはない秘密の情報や人にあまり頼めない依頼をするなら、まずここしかない。


ガラン、ガラン!!


店の扉の上部につけられたベルが勢いよく鳴って店にいる者に来客を伝えた。



「いらっしゃい!!」



これだけ騒がしいのにもかかわらず、その音は店員に届き、喧騒に負けないくらい大きな声で客を出迎える。


入って来たのはやや小太りの男だ。


この場に違和感なくとけこめるようにしているのか、服装はシャツにベスト、ややきつそうにも見えるズボンという格好だった。