「…なんて、私にわかるわけないわね」



少女はパタンと本を閉じると机にある本の山の上にそっと置いた。


そして、ふっと棚の上の方に視線を向けた。


彼女の視線の先をよく見ると古びた紙の束が本と本の間に隠すように置いてあった。



「もしかしたら貴女の探し物はあそこにあるかもしれないわね」



「え…?」



「お互い小さいと大変ね。大きくなりたいものだわ」


艶やかに笑うと、少女は来たときと同じような優雅な足取りで出ていった。


パタンと扉が閉められて、まるで先ほどの出来事は何もなかったかのように書庫は再び静かな空間を取り戻した。



ー今のはいったい…?



何だったのか。


自分は夢でも見ていたのだろうか。


ティアはしばし呆然とその場に立ち尽くしていた。


ただローズ・オットーの残り香だけが夢ではないことを告げていた。