自虐的に笑う葵を見て泣きたくなった。


……抱きしめたくなった。



「親父には感謝してるんだ。
 入院することになった母親は,土日だけ帰ってくる。
 その日だけ遊でいればいいから普段は葵。
 昔じゃ考えられないくらい,協力してくれるし。」


葵に気付かれないように私は静かに涙を流した。


でも抱きしめられてるから,バレてしまう。



「泣いてくれてありがとう。
 俺…せーちゃんに会えて本当によかった。」


それはこっちの台詞。


葵に会えて,葵を好きになって私は幸せ。


何でこんなに好きになったのかは全然分からないけど。



「今告白したら優しいせーちゃんはOKしてくれるんだろうな〜」


「…ばーか。
 ってか失礼じゃない?」


「でもしないよ。
 せーちゃんには幸せになってもらいたいからね。」


人の言うことはスルーするし,馬鹿みたいに人のことばっかり。


どうしようもない奴。


……でも,そんな葵を好きな私はもっとどうしようもないんじゃないかと思わなくもない。