感情を表に出さないことで傷付くことを回避する。


そうやって今までやってきた。


けど…強がり=弱い。


弱いから強がる。


本当は泣きたくて甘えたくて淋しくて。



「俺は親に愛された思い出がないんだ。
 この家で俺は異物だった。
 けど3年前に遊が死んで,俺は家族の中に入った。
 今のように遊として。」


遊ちゃんはもういない。


それを旭さんは受け入れられなかった。


だから…葵を身代わりにしてるのね……



「それから俺は遊になるよう努力した。
 壊れていく母親を見てられなかったんだ。
 たとえ思い出がなくても“母親”だから。」


子どもはみんな親を求める。


どれだけ憎んでいても

どれだけ恨んでいても


心のどこかに残ってる。


この人が“親”だって気持ちが。


生まれたとき…いや,もっと前からあるだろう絆が。


私たちを時には苦しめる。



「父親は仕事人間だから遊にも俺にもあまり関わろうとしなかった。
 流石に遊の身代わりには反対したし母親の説得にもあたった。
 でも母親にとって俺は遊。
 何を言っても無駄だったよ。」