するとふわっと体が浮いた。


抱き上げられたんだ…と気付いたときには,葵の腕の中にすっぽりと収まっていた。



「少しこのままでいい?」


「……葵?」


葵のこんなに弱々しい声を聞いたのは初めてかもしれない。


距離を開けてたからかな。



「ゆとり,遊ぶって書いて遊。
 これは…俺の妹の名前なんだ。」


妹さんの?


葵に似てるっていう…?



「遊は母親に似て,生まれつき身体が弱くて,ほとんど入院生活だった。
 母親は付きっきりで遊の面倒を見てた。
 だから俺は一緒にご飯を食べたり,遊んだりした思い出がないんだ。」


淡々と話す葵を見て,私の周りには私も含めて強がりが多いなぁと思った。


でもしょうがないのよ。


だって甘えられる人,頼れる人がいなかったんだもん。


ずっと一人で乗り越えて来たんだもん。