「何か悩んでるんだったら私に話して頂戴?
 聞くことしか出来ないけどね。」


「……ねぇ私,必要?
 もう要らないなら早く捨てていいから。」


無意識に口にしていた。


するとパンッと乾いた音がしたと思うと,鈍い痛みを頬に感じた。



「なんてこと言うの!!
 必要に決まってるじゃないっ
 捨てるわけないじゃないっ」


あぁ私叩かれたんだ。


翠さんに怒鳴られて気付いた。



「私がどんな想いでいるか分かる?
 いつ必要としてくれるだろうか。
 いつ用事がなくても家に帰ってきてくれるようになるだろうかって。
 要らなかったらとっくに捨ててるわ。
 私,静ちゃんが思っているような優しい人じゃないからね。」


ねぇ,用事がなくても帰ってきていいの?


言い訳なんていらないの?



「翠さん…
 私,怖いの。
 また捨てられるんじゃないかって。
 信じて裏切られるのってすごく辛い。
 もうそんな思いするくらいなら誰も信じない。」


「私は絶対静ちゃんを大事にするわ。
 だから信じて…?
 今すぐじゃなくてもいいから。
 少しずつでいいから信じてほしい。」


翠さんは力強く抱きしめてくれた。


葵と同じだ…


そう思って,翠さんのこと信じられる気がした。