願望クエスト

沈黙を破ったのは御崎鮎だった。

「じゃあ…愛那はノゾミサマに殺されたってこと…?」

「そんな、お化けとか都市伝説みたいな話で片付けられるわけないよな…。」

佐月雅人も口を開いた。

「最初は願望クエストのこと調べれば、なにかわかるかもしれないって思ったんだ…でもさ、ノゾミサマなんて本当にいるわけないだろ…愛那は…愛那は本当に死んだんだぞ!…ノゾミサマ?そんなので愛那が死んだこと、納得できねえ!」

バンッ!

と、机を叩いた音が店内に響きわたった。

店にいた客は一斉に佐月雅人たちのテーブルに注目した。


「…すみません。佐月くん、あゆ、ここを出ようか。」

鹿山博美は周囲に一礼して、二人を引っ張ってファミレスを出た。


「…鹿山さん、ごめん…」

「謝ることないよ、佐月くん。愛那のことでつらいのはみんな一緒…」

三人は、どこへ行くというあてもなく歩き始めた。

9月はずいぶん日が落ちるのが早くなったように感じる。もうすぐまた夜がやって来る。

「愛那が死んだこととアプリとに関係があるかわからないけどさ…」

御崎鮎がやっと口を開いた。

「今は手がかりがそのアプリしかないわけじゃん…。私は願望クエストのこと、もっと調べたい。だってさ、そのアプリやってる子は結構いるんだよね?もし…また誰かが死んだら…」

鹿山博美は震える御崎鮎の肩に手をあてた。

「僕は、愛那か死んだ理由を知りたい。アプリのこと、一緒に調べるよ。鹿山さんは…」

「もちろん協力するに決まってるじゃない。」

御崎鮎の顔にも少し血の気が戻り、唇の端をにっと上げて言った。
「…さすが委員長。頼りになるよ。」

鹿山博美は横目で御崎鮎を見ながら、調子いいんだから、と言うように息を吐いた。

「とりあえず明日から放課後、図書室に集合。佐月くんも学校に来られる?」

「…うん。行くよ。」

御崎鮎と鹿山博美は良かった、と言うように顔を見合わせた。

「今日はもう暗くなるし帰ろうか。また明日ね。私も怖くなってきたから願望クエストはアンインストールしとく。」

「うん、それがいいよ。じゃあ博美、佐月くん、また明日。」

「ありがとう、二人とも。また、明日…」

三人はそれぞれ帰りを急いだ。得体の知れない恐怖心はぬぐうことができない。誰かに見られているような、つけられているような被害妄想に似たものを感じていた。

コツコツコツコツ…

コツコツコツコツ…

コツコツコツコツ…


誰も、一度も立ち止まることなく家を目指して歩いた。