「ひさしぶりだな。」と俺を見ながらニヤニヤしている男は秋山 憲一といい、かなりの楽天家で彼の適当さに苦労をさせられることも少なくなかった。しかしその性格と違い彼の今まで人生はおれの知る限り謙虚で危なげないものである。中学、高校とバスケットボールで上背は低いものの抜群の運動能力とパスセンスでPG(ポイントガード)として全国で名を轟かせたほどで、いくつかの大学や会社やプロのバスケットボールチームからも誘いがあったが、本人は「背が低すぎるからNBAはむりだ」と言って俺と一緒に地元の中堅のレベルの大学に他の人と同じ一般入試を受けて合格した、しかしその大学のバスケットボール部の勧誘があったがそれをキッパリと断って、勉強とバスケットボールはほとんどせずにコンパとバイトで三回生まで有意義に過ごしていたが四回生で急に勉強をしはじめてコンパとバイトはしないようになり、みごと公務員試験に合格して現在は市役所で働いている。しかも大学時代からの恋人と来年七月に結婚が決まっている。判断力と行動力がすごいのか、人生計画はしっかりしているようだが、本人はタレントになりたいと口癖のように俺や周りの人たちに言っている。
