帝国湯へ、いらっしゃい


女湯に通じる、無防備な扉を開ける


「琴、終わった?」

「今終わったよ」


そっか


「ちょっと、こっちにおいで」

「え……」


警戒されてるし


「何もしないから」


ちょっと距離を置いて琴が近づいてきた

「コレ、見て」


大きな鏡

映るのは俺と琴


「何が見える?」

「龍ちゃん」


「じゃあ」と後ろから琴を軽くギュッと抱きしめて


「これは何に見える?」

「え……龍ちゃんだけど」


「そうじゃなくて」

「??」


そうじゃなくて

「こうしたら、恋人に見えない?」

「え……と…」



「前にさ、将棋で買ったら付き合うって話してたの覚えてるか?」

「あータケさんの家で話してたやつ?」



「俺、勝負してないし琴に勝ててもないけれど」

「…………」


けど


「俺は付き合っているつもりだけど、琴は違うの?」