帝国湯へ、いらっしゃい


――

タケさんもゴンちゃんも、大分前に帰り
俺は一人でマンガを読んでた


今日は琴先生の将棋講座の日じゃないけど
さっきのフォローをしておかないと
さすがにマズイ



カタと音がした

「琴」

「………」


あーまだ不機嫌だよ

「掃除手伝うよ」

「……じゃ男湯やって、あたしは女湯やるから」


はあ。どうしたもんだか



ひたすらブラシを擦る
この壁の向こうでは琴が掃除してる


………あー、ダメだ。イライラする


「琴!!」と女湯に向かって叫ぶ

当たり前のように返事がない


よし


「琴!番台が大変だから来て!」

俺も番台に向かう



番台を挟んで女湯側に琴、男湯側に俺が立ってる

「何?なんかあった?」

番台に上がるための階段を一段だけのぼる