帝国湯へ、いらっしゃい


店内で「カウンターでいい?」と聞いた

「うん。実はカウンターって初めてかも」


へえ


「俺、ビールね」

琴ちゃんがメニューを物色してる


「コレ、おいしい?」

「んー俺は好きだけど。試しに食べてみたら?無理なら俺が食うし」


「なあ、酒は?飲めるのか?」

「甘いのなら、飲めるかな」


なるほど



それから特に核心をつくような話題には触れず
食べたり、飲んだりして過ごして

店に入ってから1時間ほど経ったころだろうか


「なんで、デートする気になった?」と思い切って聞いてみた

「あー……」


また、はぐらかされてしまうかもしれないが
聞かずにはいられなかった


少し考えてから琴ちゃんは

「あたしも、見つけようかなって」と言った



あの、小さな幸せの話だと理解するのに時間はかからなかった

「見つかりそう?」

「えーと、たぶん」


「そっか」



見つかるといい

見つけたい

見つけさせてやりたい

なぜなら


俺にも同じことが言えるからだ