帝国湯へ、いらっしゃい


「たぶん、なの?」

「だって……」


言いかけた途中で分かった


「俺にラベンダー湯に来てほしいのか?
それとも――デートに行きたいのか?」


こいつは

俺がラベンダー湯に行くと、答えた時点で
デートはないと踏んでいたのかもしれない


将棋の読み合いでは負けるが、
この探り合いは、負けるわけにはいかない


「…………」

だんまりか



ま、こいつの立場にしてみれば

俺は客だし、無下に断る訳にもいかないんだろうな



「なんで?」


この“なんで”は


なんで、デートしたいのか
なんで、惚れたのか

という2つの意味を持つのか?



デートしたいのに、理由なんてあるのだろうか
惚れたことに、理由なんてあるのだろうか


答えは“ない”である

したいから、するんだ


それだけだ



しかし、こいつはそんな答えじゃあ満足しない

その証拠に何度でも同じ質問をぶつけてくるじゃないか