帝国湯へ、いらっしゃい


だから前しか見てなかったんだ
だから気がつかなかったんだ


クイッと腕を掴まれるまで、気がつかなかったんだ


「……琴ちゃん」


今度はさっきまでしゃがんでいた道路の
反対側に二人でしゃがんだ



「神輿、行ったけど?」

「うん」


「追いかけなくていいわけ?」

「うん」


「さっきとは大分態度が違うね」

「うん」


………しょうがねえな



「なあ。まだ時間あるの?」

「え?あ、うん」


袋から弁当を出した

「ここで食べるの?」

「ああ。だから食い終わるまでどこかに行くなよ。
一人で道端で弁当食ってたら、怪しいからな」


そしたらプッと笑った


「来週はラベンダー湯なんだ」

「そう」


「来る?」


……こいつは俺の何を探ってるんだ?


「たぶん」