「柚子様、よろしいのですか?」
「へ?」
「おふたり、ここ最近ずっとべったりですよね。主に……というか、確実に星華様からですけど」
車を降りて、水沢家の広い廊下を歩いている時、隣を歩く橘さんが小さめの声で私に尋ねる。
水沢くんと星華ちゃんは少し前を歩いているから、たぶん私たちの会話は聞こえてないだろう。
「よ、よろしくないですけど……その、なんて言ったらいいかも分からないですし」
「正直に、星華様とくっつかないで、と言ってみたらいいのではないですか?」
「そ、そんなストレートに言えないです! それに……」
「それに?」
「そんなこと言ったら、嫉妬深いって水沢くんに嫌われちゃうかもしれない、です……」


