呼ばれて顔を上げると、橘さんが笑顔で助手席のドアをあけてくれていた。
「うしろ3人は少し狭いと思うので、こちらに座ってください」
「あ、ありがとうございます」
なんだろう……橘さんを見ると平和を感じるというか、落ち着くというか。
でもいくら少し平和を感じたとしても、星香ちゃんが水沢くんのとなりにぴったりくっついてるのは変わらない。
そんなふたりの間に入る勇気もなくて、私は橘さんに促されるまま助手席へと座ろうとした。
「な……っ! ゆ、柚子!」
「へ……?」
すると、星香ちゃんが突然あせったように私を呼ぶ。
「〜〜っな、なんでもない! 星香、佳人のとなり、譲らないからね!」
「う……」
だけど特に星香ちゃんは他になにも言わず、水沢くんの腕にぎゅっとしがみつきながらほっぺを膨らませていた。
な、なんだったんだろう……?
それにあんなに密着してるのに水沢くんは「離れて」とか言わないし……!