失敗した、と落ち込んでいると「ありがとう」言いながらお父さんが箱を開けとった。
「ののの野上ゆゆ柚子さんかぁ。めずらしい名前だね」
「……え?」
すごく長い名前だね、と言いながら笑う水沢くんのお父さん。
思わずキョトンとしてしまった。
一瞬わざと言っているのかと思ったけど、水沢くんのお父さんの態度からふざけている様子はない。
なんて返したらいいのか分からず、言葉に詰まっていると水沢くんから助け舟。
「父さん、そんな長い名前なわけないよ。野上柚子だよ」
そう水沢くんが訂正すると、
「ああ、そうだったのか。ごめんね野上さん」
「い、いえ……」
ははは、と柔らかい笑みを浮かべた。
水沢くんのお父さんだから、てっきり笑顔でとんでもないことを言う人だと思っていたけど……。
実際の水沢くんのお父さんは、とても優しい話し方と笑い方で、まるで仏のような人だった。


