キミの主導権、僕のもの




「お風呂、入ってくれば?」



「え?」



「その間に洋服とか洗ってもらうから。お風呂からでたら着るものは用意してあるから」



「う、うん。でも、私が先に入っていいの?」




ホテルを見つけてくれたのは橘さんだけど、水沢くんが頼んでくれたわけだし。




「いいよ。ちょっと僕は落ち着きたいから」



「……? じゃあ、先に入るね」




あまり目を合わせようとしない水沢くんを不思議に思いながら、私はバスルームへと向かった。




さっきの水沢くんの言葉……。




落ち着きたい、ってどういう意味なんだろう。




口数も少ないというか、あんまり私のほう見てなかったし。




不自然な水沢くんの態度に疑問をもちつつ、私はお風呂に入った。





そのころ。




部屋にひとりになった水沢くんが、「耐えられるかな、僕……」と自信なさげにつぶやいていたことを私は知らない。