キミの主導権、僕のもの





そして。




「……」




玄関先で最終チェック。




いつもとちがう自分が鏡には映っていて。




ちょっと……いや、かなり気合いを入れすぎたのではないでしょうか、これは。




どうしよう「気合い入れすぎでしょ、キミ」とか言われたら……!




大いにありえる……!




うぅ、やっぱりこのリップだけでも落とそうかな。




なんか恥ずかしくなってきた。




なんて思い、自分の顔をまじまじと見つめていると、腕時計がふと目に入る。




「ぅえ!? も、もう行かなきゃ……!」




駅まではそう時間はかからないけれど、急がなきゃ電車乗り遅れちゃう!




「い、いってきます……!!」



「はーい、いってらっしゃーい」




いってきます、と言いながら家を出るとリビングの方からお母さんの声が聞こえてきて。




私はその声を背中に受け、家を出た。




結局、リップ落とせなかった……。




でも水沢くん、いつもとちがう私をみて、すこしでもかわいいって思ってくれるかな?




不安と期待、両方をもって私は水族館の最寄駅へと向かったのであった。