(僕が来るの、知っていたんだろうか?)
井戸端でラムネを開けると泡が溢れ出て思わず口元に瓶のふちを唇にあてた。
冷たく冷やされた痺れるような刺激が喉を通り過ぎていく。思いのほか喉が渇いていていっきに飲み干してしまった。
カラカラカラン
喉に詰まるような感覚で思わずむせると、瓶に入っているはずのビー玉が見当たらない。
(飲みこんじゃったんだ)
喉に手を当ててみるが、もう通り過ぎてしまった後のようだ。
途方にくれて東屋に戻ってみると男はいなくなっていた。
「先生ー。せんせ-い」
辺りに男の姿はなく、薬玉だけが東屋に残されている。
「これ、大事なものじゃないのかな・・・。まったく、せんせーい」
男を捜しに行こうとしたが、薬玉をそのまま放っておくわけにもいかず、梁から薬玉を取ると屋敷の玄関口に向かって歩き出した。木で隠れていた池が歩くたびに光を反射させてきらめいた。
薫は飲み込んでしまったビー玉のことが気になったが、まずは男を捜して相談するほうがいいだろうと思った。中年にも青年にも見える男だが、少なくとも薫よりはものを知っていたからだ。
「せんせ・・・い」
ふと、池の畔に髪の長い、麻の着物を着た女の人が立っていた。
(いつの間に・・・?)
日傘が影を作って顔かたちまでははっきりを見えないが、とても美しい人のように思えた。
「あの・・・先生に御用ですか?」
薫の問いに女は薄く微笑んだような気がした。
「約束を覚えていてくださったんですね?」
「あの、僕、あなたに会ったことないんですが・・・」
薫は何のことか見当もつかず困惑した面持ちでいると、女がすっと歩み寄り、薬玉を薫の手から受け取った。薫は何かに操られているような感覚で、自分の意思とは無関係に身体が動いた。
「輪廻の巡った今日この日を覚えていてくださってうれしゅうございます。鷹彬様」
「た、たかあきらって・・・人違い・・・」
女は薫の身体を抱きしめると、意識はそこでなくなった。
井戸端でラムネを開けると泡が溢れ出て思わず口元に瓶のふちを唇にあてた。
冷たく冷やされた痺れるような刺激が喉を通り過ぎていく。思いのほか喉が渇いていていっきに飲み干してしまった。
カラカラカラン
喉に詰まるような感覚で思わずむせると、瓶に入っているはずのビー玉が見当たらない。
(飲みこんじゃったんだ)
喉に手を当ててみるが、もう通り過ぎてしまった後のようだ。
途方にくれて東屋に戻ってみると男はいなくなっていた。
「先生ー。せんせ-い」
辺りに男の姿はなく、薬玉だけが東屋に残されている。
「これ、大事なものじゃないのかな・・・。まったく、せんせーい」
男を捜しに行こうとしたが、薬玉をそのまま放っておくわけにもいかず、梁から薬玉を取ると屋敷の玄関口に向かって歩き出した。木で隠れていた池が歩くたびに光を反射させてきらめいた。
薫は飲み込んでしまったビー玉のことが気になったが、まずは男を捜して相談するほうがいいだろうと思った。中年にも青年にも見える男だが、少なくとも薫よりはものを知っていたからだ。
「せんせ・・・い」
ふと、池の畔に髪の長い、麻の着物を着た女の人が立っていた。
(いつの間に・・・?)
日傘が影を作って顔かたちまでははっきりを見えないが、とても美しい人のように思えた。
「あの・・・先生に御用ですか?」
薫の問いに女は薄く微笑んだような気がした。
「約束を覚えていてくださったんですね?」
「あの、僕、あなたに会ったことないんですが・・・」
薫は何のことか見当もつかず困惑した面持ちでいると、女がすっと歩み寄り、薬玉を薫の手から受け取った。薫は何かに操られているような感覚で、自分の意思とは無関係に身体が動いた。
「輪廻の巡った今日この日を覚えていてくださってうれしゅうございます。鷹彬様」
「た、たかあきらって・・・人違い・・・」
女は薫の身体を抱きしめると、意識はそこでなくなった。


