『………』
ロミオは私を離してくれない。
私はうつむいて、必死に涙をこらえながら
『離して…離して… っ』
と、必死で訴えた。
圭ちゃん、離して。
相楽さんの所へ行って。
圭ちゃんを、忘れたい。
だって、こんなにも好きで
好きでいてもいいことなんてないでしょう?
誰にも、利益がなくて
私の心は泣いて
もう、頑張ったもん…
唯はもう、もう…
「…はな…して…っ、ひっく…圭ちゃん…」
やっぱりこらえきれなかった涙が、頬を伝って
そのままドレスにシミをつくった。
すると圭ちゃんは、ゆっくりと手を離した。
『………そういうことなら』
そう言って、背を向けて舞台袖に歩いて行った。
『………』
私が何も言えずに舞台に立ち尽くしていると、袖から幕が迫ってきた。
アドリブだらけの状況を把握した演劇指導の先生が、一旦幕を閉めろと指示したらしい。