「そっか。」



北野くんは短くそう言って、ベンチを立った。


「帰ろ、お母さん心配してるでしょ?」


「…そうだねっ」



さっきまでは、誰にも会いたくなくて

家に帰りたくなかったけど、なんだかスッキリしたみたい。





「家まで送ってくから、ほら、行こ」


北野くんが私の前を歩きながら、公園を出る。




そういえば…



「北野くんはどうしてこの公園に来たの?」



「…ぷっ。何それ、ダジャレ?」



「…え?えぇ!?ダジャレなんて言ってないよ…っ」





「はははっ。さぁ、なんでだろうね」



…もうっ。



いじわる…っ



「明日、文化祭だね。楽しみ?」



うわっ!話題かえた…!


ひきょうものぉー!


て、もう明日は文化祭かぁ…



ロミオとジュリエットの公演も明日…


この前、たまたま演劇に脇役で出るクラスメートの台本を見つけて少し開いて見た。


演劇とか案外、興味のある私はすぐに台本を覚えちゃって。



だけど、そのストーリーをあの2人が演じるということに言いようもないくらい、悲しくなって


1人でジュリエットを演じながら、泣いてたの。



”泣き虫だなぁ、唯は。ほら、おいで”




って、そんな言葉を思い出しながら。



愛し合うロミオとジュリエット。



圭ちゃんと、相楽さんにぴったりの演劇だね。




「…うんっ!すっごく楽しみ!!」