見た目を裏切らない優しい声音と、柔らかく微笑む彼女。
彼女は正座したまま伸ばしていた手を膝に戻し、ゆっくりと言った。
「暴れちゃだめよ。あなたのお腹の傷が開いちゃうわ」
警戒させないようになのか、彼女は無理に距離を縮める気はないらしい。
ともあれ、こんなわけのわからない場所に居続けることはできない。
お兄ちゃんが、汐弥が来てしまう。
一般の家庭に、その筋の者を関わらせるわけにはいかない。