お母さんに抱いた恐怖とは、また別の恐怖。
何がそうさせたのか、何によってそうなってしまったのか。
訊かなくてもわかる。
すべての元凶は、誰でもない私。
「これからは二人で暮らそう。もうお前を苦しめる奴は消えたんだ」
ジャリッと、一歩踏み寄る。
だけど、私は一歩後退して首を振る。
空腹で目眩がひどいけれど、滲み寄る恐怖が気を失うことすら許さない。
「妃彩?どうして逃げるんだよ。いつもみたく“お兄ちゃん”って、」
言い終えるよりも先に、私は背を向けて走り出した。