怖くないはずなのに、安心していいはずなのに、私は……!
「妃彩っ!?」
肌が粟立つのを感じた瞬間、私はお兄ちゃんの手を払いのけるのと同時に、恐怖が私の体を支配した。
とにかく、逃げなくちゃいけない。
そう思ったから、痛む体と抜けそうになる力を振り絞って駆け出した。
眩しいくらいの夕日。
今までの暗い世界とは打って変わって明るい世界。
それなのに、濃い血の香りが鼻をつく。