気配に気付かないなんて、弱くなったんじゃないの。
泣きそうになり、なんとかこらえる。
「お土産があるんだ。ほら」
翔の背後から顔を出せば、一様に同じ表情で固まるみんな。
確かに、死んだ私がひょっこり来たら驚くよね。
翔の背後に身を隠そうと戻り始めるも、綾の声で止まる。
「本物、なの?ねぇ、棗なの?」
「棗じゃないよ。妃彩だよ」
翔が否定して、今の私の名前を言う。
「どっちでも……どっちでもいい」
ゆっくりと近寄って来る綾の目には、うっすらと涙が浮かんでいる。