「僕は何も言わないよ。棗……妃彩はお姫様だからね」
「それはやめてよー」
くすくすと笑う妃彩は、扉からこっちに近付こうとしない。
何か、まだあるんだな。
ひとしきり笑って話すと、妃彩は悲しそうに言った。
「あのね私、少しの間みんなには死んだって思われていることにしたの。だから、ここに来たこと言わないで」
「もう、会えないの?」
「わかんない。でも、色々と清算したら、必ずみんなのところに帰るよ。だからそれまでは、待っていて」