「やっぱり転校までする必要はないと思うんだけど」
腕を組んで口を尖らせる心葉は最近ずっと同じことを言う。
もう決まってしまったことだとそれを毎度なだめるのは綾。
「……棗、寂しくなる」
「仕方ないよ。鬼麟はいないってことにするんだし」
鬼龍の境界を出て、違う地域にある高校へと転校する。
それにここにいると本家に悟られやすいし、だったら少し離れて動いたほうがいい。
「そろそろ準備が整うんだし、動いとかないとだからね。心葉も紘も棗に引っ付かない」
両腕の二人にお母さんのように叱る綾。