その問いに、彼は頭を上げる。
落ち着き払ったその顔は、どことなく棗に似ていて、ああやっぱり兄妹なんだなと思ってしまう。
「妃彩に憎まれるためだ。そして、あいつに殺されるため」
言い切った彼の瞳に浮かぶ愛情と悲しみ。
殺されたいと願う。
妃彩のことを愛しているのに、その手で終わらせて欲しいと願う気持ちは分からない。
きっと彼の考えていることなど誰にも分からない。