どうして、そんな顔をするのだろうか。
そう思っていると、不意に彼が足を動かした。
僕は反射的に踏み込み、傷口を押さえる手とは逆の手で拳をつくり、殴りかかる。
痛い痛い痛い。
傷口が沸騰しているかのような痛みが走るけど、構わずに歯を食いしばって動く。
何が痛いだ。
あの時のほうがもっと痛かっただろう。
救ってくれた、笑わなくてもいいと言ってくれた。
あの子のほうがずっと痛いのに、それでも僕に不器用でも手を伸ばしてくれたんだ。
恩返しというほど綺麗なものでもない、罪滅ぼしというほどとらわれていない。
でも、彼女のためにできるなら。