完全に見えなくなった背中に、小さく笑う。
いつからだろう、僕がこんなにも陳腐な人間になったのは。
痛む傷口に手を添えても一向に止まる気配のない血に辟易する。
幸い拳銃は綾たちが飛ばしてくれたおかげで彼は素手の状態。
飛び道具を使われないのだからこんなにも余裕を保てる。
いや、余裕じゃないけど。
彼は妃彩の去った後をしばらく眺めていたけれど、やがて諦めたように視線を僕に移す。
その瞳には悲しみが渦巻いていて、小さな疑問が浮かぶ。