しかし、樹彦さんは私の言葉を遮って溜め息混じりに言う。
「おいおい、何出て行こうとしてんだよ」
驚きに目を見開きながら恐る恐る顔を上げると、彼は前髪をかきあげる。
「迷惑だのなんだのと、んな余計なことを考えてるんじゃねぇよな?」
細められた目は組頭の目をしていて、鋭い刃のように研ぎ澄まされている。
肘掛けに置いていた右手で拳をつくり、彼は畳に叩きつける。
「たとえ血が繋がっていなくても、俺らは心をかよわせ同じ釜の飯を食ったんだ。家族なんだ。お前が本家の娘で、俺らは分家だとしてもだ。危険なんざ百も承知だ。家族守るためなら俺らは本家にだって逆らう」