あんなに恐怖を体現していたのに、あっさりと冷たくなってしまった人。
それを行った、優しかったはずの笑顔。
きっと、私を逃がすことはないと思う。
「君が……」
うつむく私の手を取り、彼は言う。
「君がどんなところにいたのかは聞かない。君が話してくれるときを待つ。でも、君はこんなにも傷付いている。それを治せるなんてことは言えない。けれど、それを少しでも和らげ、癒やすのが家族なんだ。君がどんな環境にいたのかは知らないけれど、子供がこんなに傷付き、冷えたままでいるのは、大人にとっては耐え難いんだ。少なくとも僕らはね」