わたしはむっとする。
「バカじゃないです」
「バカだろ」
洸太が言う。
「バカじゃないっ」
洸太につかみかかろうとしたら、結衣に止められた。
「まあまあ、美織。むきにならないの」
「面白いね、君たち。とくに洸太くん、君が一番面白いよ」
洸太がむっとした顔を矢野先輩に向ける。
「よろしくね。天文部へ歓迎するよ」
矢野先輩が洸太に手を差し出した。
だけど洸太は手を握り返そうとしなかった。
凍りつく空気。
沈黙を破ったのはお兄ちゃんで。
「矢野。からかうのはそのへんにしとけよ」
すると矢野先輩は手を引っ込めて「はーい」と降参のポーズをした。

