背後に気配を感じた瞬間、わたしは制服の襟をがしっとつかまれて後ろに引っ張られた。
「いい加減離れろ、美織」
洸太だ。
「やだー」
「人がくるだろ。悠兄に迷惑だって朝言ったろ」
「別にいいもん」
「お前はいいかもしれないけど、悠兄に迷惑だろ」
仕方なく離れる。
「お兄ちゃん、迷惑?」
わたしはお兄ちゃんに聞く。
「別に迷惑じゃないよ」
「悠兄が甘いからいつまでたっても美織はブラコン卒業できないんだよ」
はは、と目じりを下げて笑うお兄ちゃん。
「…お前がブラコン卒業できないと、俺が困る……」
洸太が窓のほうを見ながらぼそっと呟いた。
「え?何?今なんて言った?洸太」
よく聞こえなかった。
「なんでもねーよ」

