君がメガネを外す時






ようやく部室に辿りつくと、お兄ちゃんが望遠鏡の手入れをしていた。


「お、来たね、美織」


わたしは走っていって、お兄ちゃんに抱きついた。



「わお!」

矢野先輩の声が狭い部室に響く。

「ちょっとちょっと、あのふたり付き合ってる系?」

「違います、兄妹です」

結衣が冷静に答える。

「兄妹?仲良すぎじゃね?」

「昔からずっとああです」



矢野先輩と結衣の会話を聞きながら、わたしはお兄ちゃんにしがみついて、お兄ちゃんの匂いを嗅いでいた。


安心するお兄ちゃんの匂い。


「こらこら、美織。もうちょっとで望遠鏡落とすところだったよ」


抱きついたわたしの肩を優しく包むお兄ちゃんの手。


ずっとこのままでいたいな。




ずっとずっと、この優しい匂いに包まれていたい……。