「んっと?あの、もっとゆっくり喋って……」
『-------行けよ。もう俺のすることは終わったから』
「え?どっか行く?それともあっち行けって言ったの?……勝手に名前呼んだこと怒ってるの?」
和泉くんは頭痛でも感じたかのように頭を抑えた。
『ひどいにも程がある。腹が立つからそれ以上喋るな。全くなんでこの程度すら満足に聞き取れないんだ。そのお頭はバカト並みか』
「え?バ、バカ?」
ヒアリング能力の低さをコケにされているとも分からず、必死で和泉くんの言うことに耳を傾けたけれど勿論それだけのことで能力がアップするわけもない。
わたしがうんうん唸っていると、冷ややかに見ていた和泉くんが不意にふっと鼻で笑う。
『馬鹿なやつ。どうせ自分の置かれた状況も理解してないんだろ?』
それも冷笑めいたものじゃなくて少し困ったような苦笑いを。
強烈な磁力のあるその笑みに思わず視線が引きつけられていると和泉くんと目が合った。途端にその鳶色から笑いが抜けて、物言わぬ静かな目はじっとわたしを見つめてきた。
『……何を選ぼうとおまえの勝手だ。自由にすればいい』


