ひとり黙々とソースの味を吟味していた私に話しかけてきたのは、わが家庭科部の部長花村エリナ先輩だ。

いつもはすっきりしたボブスタイルの部長は今日はビジューの飾りを散らした華やかなアップスタイルにして、細い腰と魅惑的なまあるいヒップをこれでもかと強調したマーメイドラインの大人っぽいロングドレスに身を包んでいた。

「……うわぁ先輩、お姫さまみたい!」

鮮やかなターコイズブルーはまんま人魚姫だった。思わずぽわぁと見蕩れていると、先輩に呆れたように返される。

「上野はなんで制服なのよ」
「え。今日って制服でもOKでしたよね?」

制服は冠婚葬祭可のとても経済的で便利なオールマイティウェアだ。

「だからってほんとに制服で来る奴があるか。周り見てみなさいよ、みんな超気合入った格好じゃない」

たしかに会場にいる子は、かわいいピンクのふわふわだったり、エレガントなロングだったり、はたまたセクシーなカクテルだったり、みんな自身によく似合いのドレスを着てきている。

「みんな高大くんの目に留まるために必死だっていうのに」
「うーん、でもわたしには関係ないことだし」
「あらあら上野ってばまたそんな枯れたこと言って」
「枯れてませんって!」
「ああ、そっか。上野にはもう王子様がいるんだっけ」