乙女たるもの恋されろ!






「和泉くんってばっ!」


和泉くんに促されてLサロンを後にすると、和泉くんはまたすごいスピードで歩き出してしまう。

全力で追いかけてやりたいけれど、今履いているのはローファーとは違って繊細なピンヒールだ。急角度の見た目のわりには不思議なくらい歩きやすいけれど、でもこんな高いヒール履くのは生まれて初めてでおっかなびっくり歩くことしか出来ない。またみるみる距離が開く。


「もうっ和泉くん!アイザックくん!!わたし走れないよっ」


わたしが文句を言うと、数メートル先で和泉くんが止まる。どうせ待ってくれないと思っていたからびっくりした。和泉くんは訝しむ目で見据えてくる。


『なんで俺の名前を?』
「……あ、えと…名前?その、わたし英語はさっぱりだけど、さっき和泉くんが高山さんと話しているとき『アイザック・イズミ』って名前のとこだけは聞き取れて」


名前呼びしたことをしどろもどろに言い訳してると、和泉くんがわざとらしいくらい大きな溜息を吐いて冷めた声で言った。


『まあ、どうせそんなところだろう』