『少し大きかったか』

すこしだけ納得がいかなそうな顔してそういった後『……まあでもそれほど問題があるレベルじゃないか』と言って和泉くんは試着室を出て行った。


『ミセス・ユウコ。支払いはカードで』
『承ります。……まぁ!』


試着室からそろそろ出てきたわたしをみて、高山さんがうれしそうな顔で歩み寄ってきた。

「なんて素敵なんでしょう。まるで若木の妖精みたい!」

高山さんは少女みたいに目をきらきらさせて言った。


「本当によくお似合いです。御髪の飾り一点だけにしたのは正解ですわね。これ以外余計にアクセサリーを付けられないのも、むしろお嬢様の清楚な雰囲気がより引き立てられていてよろしいかと。このようなパーティドレスをお召しになられるときは足し算より引き算のコーディネイトのほうがよほど難しいものです。とてもセンスのあるお見立てですわ。若葉色のドレスも、シンプルで雰囲気のあるお履物も、今まさに大人の女性の階段を上っていかれるお嬢様の、その第一歩を演出するようで初々しくチャーミングでありながらとても女性らしくてエレガントですわ」


あまりにも褒められすぎてお礼も謙遜の言葉も出てこなくなって照れていると、高山さんが聞こえないところで和泉くんが『この俺が見立てたんだ、当然だろ』と呟くのが聞こえた。

どうせ何か悪態を吐くようなことを口にしたのだろうと思ったのに、その横顔がどこかたのしげに見えたから、文句を言ってやろうと思っていた気持ちは宙に浮いてしまった。