他の男子が同じ事をしたらきっとふざけてるようにしか見えないだろう。ジョークにしたってその場が薄ら寒くしらけるだけだ。

けれど端正な顔立ちに大人として完成されつつある体躯の和泉くんがそれをするとまるで外国の青年紳士のようで、くやしいことに見蕩れるくらい様になっていた。

おまけにこの姿勢だと、わたしよりもずっと背が高いはずの和泉くんをわたしが見下ろすことになる。

上からみると和泉くんの陰影ができるほど深い彫りの顔立ちや鳶色の瞳にかかる長い睫毛がよりはっきりと分かる。男の子を見下ろすというのは着ているドレスやこのLサロン以上に非日常で落ち着かない気分になってしまう。


『思っていた以上にちいさな足だな』


しばらくわたしの足を見つめてからそう呟く。

わたしの片足がすっぽり包まれてしまうほど大きな手の、少し乾いてごつごつした感触にああ男の子の手だなと思っていると、和泉くんは今までの振る舞いみたいが嘘みたいなやさしい手つきで箱から取り出したパンプスをわたしの足に嵌めてくれた。

恭しい手つきでもう片方の足にも。

和泉くんが履かせてくれたパンプスはお姫さまの靴みたいなすてきな靴だった。10センチ以上はある急な角度のピンヒールで、オフホワイトの光沢が上品なエナメルに、尖った靴の先端部分だけビーズのような異素材が使われている。

シンプルだけどすごく華奢なラインが女らしくて気品がある。きっと女の子なら誰もがいつか履いてみたいと夢見る、ため息が出るほどきれいな魔法のような靴だ。