「わっ!」
ちょうど膝裏に試着室に置いてあった椅子が当たって、膝かっくんされたみたいにどすんと椅子の座面に尻餅をついてしまった。ほんのちょっとだけすてきかもしれないと思いかけていたのに。


ばかめ、そう思った自分。


イケメンオーラに容易くだまされてしまった自分が不甲斐なくて仕方ない。


「もう、和泉くん!さっきからひどいよっ、転ぶとこだったじゃない」


和泉くんはわたしのいうことなんか聞きもしないで、高山さんから受け取った箱の蓋を開く。

「ちょっと、聞いてるの?和泉くん日本語話さないけど、聞き取れてはいるんでしょう!?」

いきなり和泉くんが座ったままのわたしの足元に屈みこんだ。

「さすがにわたし怒って------」

あろうことか和泉くんはその場に片膝をつく。そしてまるでお姫様に跪く騎士みたいな姿勢になった。大きな手は壊れ物に触れるような手つきでそっとわたしの右足を取る。